〝 お便りがおくれて済みませんでした お忙しいなかを先日はわざわざ御いで下さり 珍しい果実類たくさんいただき歓んでいただいているうち 続いて前々日高価な薬品小包便にて頂戴いたし お礼の申し上げようもありませんが 御厚情の程身にしみて有難く思います また御兄上様には大へんな御手間や御心配をおかけしてしまい 恐縮次第もありません 現在使用しておりますものばかり早速重宝いたします
しかし どうかもうこれ以上の御配慮給わらず 結構すぎて困ってしまいます ゆえ どうか御放念の程おねがい申します 近いうちに女房が一寸ゴアイサツに伺うと申しておりますが いつかよくわかりません ゆえ放っておいて下さいますよう、奥さま、御兄上様夫婦には どうぞくれぐれも宜しくおねがいします 〟
文字から人柄が滲み出ているようです。この葉書を見ながら文字を起こしていると、感無量の気持ちになりました。この慎みの深さはどこから来るのでしょうか。(6月26日)
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1950年代の童画家の写真を、『アサヒグラフ』(1951年4月11日号)に見付けました。8名の童画家が写っています。皆さんご自分の仕事場(画室)での写真ですが、茂田井さんだけが喫茶室をインタビューの場にされています。〝私は職人です〟〝仕事場はお見せするようなところではありません〟、このような声が聞こえて来ます。それにしても優しい笑顔です。(2022年7月)