入学したのは2021年の4月です。白板に自分の中絵を書して挨拶をしました。以下が第一回目の文章です。

 はじめまして。この春より入学するピカピカの65歳です。一般の人にはわかりにくい「製版と色再現」という荷物を背負い、駆け足で働き続けてきました。

 この教室で、背中の荷物の中身を広げ、自分でもう一度見つめてみたい、そのためにも文章にしていくことができればと入学しました。ただ語彙力がありませんので、皆さんやおのちよ先生の力をお借りしたいと考えています。最初に思い浮かんだ荷物の中身はフレンズ(friends)、友の複数形です。この「友」は、同世代のワイワイと遊んできた学生時代の友とは違います。皆さん、ぼくよりずっと年上でした。

 ある人から「チカちゃん(ぼくのことです)の友達はお年寄りばかりだね」と、ふざけ半分に言われたことがありました。

 ただ、最近は友とは年齢ではなく、引き付け合う磁石のような人のつながりと考えるようになってきました。その引き付ける力は何であったのかを考えていました。『チコちゃんに叱られる』というNHKの人気番組があります。チコちゃんが質問した「大人になるとあっという間に1年が過ぎてしまうのはなぜ」(2018年7月20日放映)に対しての答えにはっとしました。答えは「人生にトキメキがなくなったから」でした。答えてくれたのは時間のスペシャリスト千葉大学の一川(いちかわ)誠先生です。発見、疑問、驚きと、心がどれだけ動いたかがトキメキ、そのトキメキの密度が時間を決めると話されていました。ぼくにとっての「友」とはこのトキメキをくれた人、またこちらからもトキメキをお返ししたいと思った人です。まさにトキメキが磁石であったと思います。発見とは無知な自分を気付かせてくれることでした。これから書いていく「友」と出会ってからは勉強が好きになり、「友」へトキメキを返したく勉強をするようになりました。文章を書いていくことで、背中の荷物の中から「友」にひとりずつ出てきてもらおうと考えています。

 最初に登場してもらうのは、ぼくにユーモアを教えてくれたハンス・シュトルテさんです。(2021年11月)