「目がみえなければ テレビよりラジオでしょうね」
よくそういわれますが、そうではなさそうです。
「ラジオのニュースは 原稿をめくる音がしません」
そういえば、テレビニュースは、原稿をめくる音がします。
そのほうがいいというのです。
「ラジオのスポーツ放送は、 アナウンサーがしゃべりすぎます」
なるほど、テレビでは、画面だけみせることがあります。
そのようすをじいっと じぶんで思いうかべたいというのです。
この文章は、前回紹介した『雨のにおい星の声』の一節です。自分でイメージを思い浮かべることの尊さを、あらためて教えてもらった気がします。
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点字の本を読んでいると、視覚障がい者にとって、点字は読書や情報を得るだけの文字ではなく、文章を読み書きしながら思考を深めていくものであり、点字を大切に考えていることが伝わってきます。
また、音声を聞いているだけでは、感情移入が難しく、小説などは点字で読むと書いてありました。
NHK Eテレの福祉番組で、全盲の弁護士である大胡田(おおごた)誠さんが話されていたことが深く印象に残っています。
それは、番組に参加していたパネラーからの質問で「一番多く読まれるのはどのような本でしょうか」に対して、大胡田さんは「いわゆるエッチな本です。指で何遍も強くなぞられ、点字が擦れて無くなるくらい読まれています」と、明るい笑顔で話していました。
この話を聞いていて、ぼくは笑いながらも心がふるえました。
視覚障がいの人は、ぼくたちのことを晴眼者と言います。しかし、心の中がいつも晴れているわけではありません。
イメージすることは、まだ見えていない心の闇に灯を点すことではないでしょうか。晴れていても曇っていても、昼でも夜でも、そして視覚障がいの人も晴眼者の人も、灯は同じであると思いました。(2023年6月)