映画「マイ スモール ランド」を観ました。よい映画でした。パンフレットを購入し、読んでいる中で〝カラリスト〟という言葉を知りました。映像の色を調整し、より魅力のある映画にしていく仕事でのようです。この映画では、フランスのスタジオで、監督と共にカメラマンや音響効果に携わった人たちも一緒になって、映画の色を作り込んでいったようです。ぼく自身、印刷を通して『色』に関わってきたからでしょうか〝色〟〝カラー〟の文字を見ると、どうしてももっと深く知りたくなります。
映画の中では、主人公・サーリャの友達・聡太がカラースプレーやペンキなどの画材で遊ぶ場面がたびたび出てきました。監督の川和田恵真さんは、色を映画の中で大事にしている人と思いました。映画の中で、クルドの人たちの民族衣装の美しい色彩も印象に残りました。
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フィルムの時代の映画の色は、照明による演出もありますが、フィルムメーカーの色作りも大きく影響していました。映画の最後に流れるエンドロールには、現像所名とともに〝Kodak〟〝Agfa〟〝FUJIFILM〟などの名を見ることがありました。岩波ホールで見たアンジェ・ワイダ監督の「愛の記録」では、アグファ(agfa )フィルムの特徴であるやや色を抑えた冷色系の色調が、映画の印象を生み出していることがパンフレットに書かれていました。
もうひとつ映画の色で思い出すのは、宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」(2001年)のDVDです。DVDを再生してみると、映画館で見た色とは異なり赤過ぎるのではないかと裁判が起こりました(後に京都地裁で和解)。ぼくもこのDVDを観ましたが、最初は赤カブリが気になりましたが、見ている内に徐々に目が慣れていきました。いわゆる色順応です。
このことを、多川精一さんが発行していた『紙魚の手帳』の27号(2004年)に、「『野の草と木と』製版と」で書きました。テーマは、印刷物を作る際のカラーコミュニケーションでした。後日、ホームページに掲載したいと考えています。当時は、色に関わることをカードに毎日一枚メモし、頭の中を色で埋め尽くすように文章を考えていきました。その時から、色は目と一緒に考えるものであり、目のことをもっと知らなければと考えるようになりました。
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〈忘れられない〝自由の女神〟〉
製版のスキャナオペレーターとして、入稿するカラーフィルムを扱い始めた頃のことです。 〝自由の女神〟 は、木炭デッサンで使う石膏像と同じ色と思い込み、白に近い無彩色にして色校正を出したことがありました。戻ってきた赤字は「現物の色に」だけでしたが、実際の像は青銅でできていることを知り、顔から火が出るような恥ずかしさを感じました。色は作るものではなく、見聞を広め雑学をたくさん身に付けることで初めて、大胆に動かすことができることを知りました。
また、知らない色は、周囲の状況をよく観察し、色の自然なつながりを大切にして判断することを学びました。(2022年6月)