中学時代から大切にしてきた詩集です。最近ようやく「本」として見ることができるようになりました。装丁は辻村益郎さん。35歳の時のブックデザインです。

 本のサイズは縦210㎜×横185㎜。函の右上に「光る砂漠」の文字があります。本を抜いていくと風紋が続き、本体の「光る砂漠」は最後に左上に見える仕組み。また、見返しには明るい黄色い紙が使われています。一枚めくると見開きの白黒写真の扉(とびら)。黄色を見た残像からでしょうか、白黒写真の白がより白く光って見えました。そして、本文のところどころに配置された色黒写真が、視覚の上からも詩の余韻を広げているように思います。

 辻村益郎さんは、福音館の「たくさんのふしぎ」の1989年11月号(第56号)で、『本のれきし 5000年』を作った人です。その付録の中で、「(本のことを)あなたの記憶の『ひきだし』に、今月号のなかの、ほんの2~3ページだけでも。ぜひ、しまっておいてください。」と書いています。人の印象と記憶を大切に、本作りをしてきたブックデザイナーと思います。

 辻村益郎さんは 、この本の他にも童心社の絵本の装丁をいくつかされています。その中の一冊に『雪の夜の幻想』(いぬいとみこ作・つかさおさむ画 1981年 / リンク先は蔵前にお店のある古書フローベルグさんの出品ページです)があります。この絵本の原画からの色分解は、ぼくが担当させてもらいました。この本も美しい絵本です。懐かしい製版会社での思い出です。(2022年1月)