鈴木義治さんが担当された本で紹介されていたお顔をいくつか紹介します(『**』は書名)。

 〈鈴木義治さんの素顔Ⅰ〉の音声には入っていませんが、応じてくれた本屋さんからは「少し低い声で、唇を曲げて話す人でした」とお聞きしました。

 新聞小説「おせん」の挿絵で有名な、画家の小村雪岱さんの顔にも似ています。

『芸術新潮』2010年2月号より
資生堂意匠部時代。右から二番目が雪岱(1920年頃)

 小村雪岱さんも、左の唇を少し曲げるようにしており、そこに穏やかな中にも強い意志を見ることができます。義治さんもきっと意志の強い方だったと思います。

 この衝立(ついたて)は、義治さんが使用していたものです。絵を取りに来た編集者を待たせ、この裏で絵を描いていたようです。絵を描くところを見られたくなかったのでしょうか。このようなところにも頑固で意志の強さを感じますが、たいへん繊細な人だったのかもしれません。(2022年4月)