『美術の先生』と入力してみました。
書店で、『あなたのための短歌集』(木下龍也・ナナロク社 2021年刊)の表紙カバーの文字が目に留まりました。
〝高校で美術の先生をしていますが、学校が好きではありません。これからも頑張って働いて行ける勇気をもらえる短歌をお願いします。〟とありました。
歌人・木下龍也さんが、依頼者からのメールをもとに短歌をつくり、便箋に書いて封書で届ける短歌の個人販売をしているそうです。この本は、その中から依頼者から提供してもらった100首を収録しています。
この美術教師からの依頼に対し、木下龍也さんは短歌で、
〝先生は光の当たらない面を見つめるための時間をくれる〟
と書いていました。この言葉に魅かれ、本を購入しました。
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美術の授業は、主要科目の影に隠れた存在でしたが好きな時間でした。ただ、自分を表現することに慣れていない(自分を出すことを照れてしまう)時期であり、絵に対する取り組みも中途半端なことが多かったように思います。小学校では描くのに夢中、中学では描く楽しみ半分「照れ」半分、高校では表現することに対し「照れ」ばかりが出ていました。そうではない人もいましたが、美術の時間は、他の授業とは別の時間が流れていたように思います。それは、木下龍也さんが書いているように、自分と向き合おうとする時間でした。
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本棚の映画パンフレットの間から、高校時代の美術の時間に作ったドライポイントの版画が出てきました。パンフレットは『クリスマス・キャロル』(アメリカ映画 1970年公開 ロナルド・ニーム監督)です。自分の心をうまく絵にすることができず、『クリスマス・キャロル』以外の映画パンフレットを見て、つなぎ合わせるように一枚の絵にしていきました。
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父親は数学の教師でしたので、教師の道を考えたことがありました。その時浮かんだのが美術の教師でした。ただ、先生になるための勉強をすることはありませんでした。
ある時、家のお墓の斜め向かいのお墓を指し「このお墓は、お父さんの同僚の美術の先生のお墓だ」と聞きました。今も、お墓参りには、そのお墓にもお線香をあげています。
早くに亡くなられた先生のようでしたが、何か不思議な縁を感じています。お墓は大田区の萩中という町にあります。(2022年7月)
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現代美術社の高等学校教科書『美術 自然から学ぶ』には、「迷い」「悩み」が素直に表現されている版画が載っていました。この緊張感のある版画を見ていると、自分の版画がやけに薄っぺらに見えてしまいます。
この教科書には、「絵は描写力が無いと作者の心を伝えることは難しいが、版画は版を作っている時は作り手にイメージは見えないため、心を素直に出しやすい」と書いてありました。現代美術社の教科書を見ていると、もう一度過去の自分を思い出し、美術の時間のことを考えたくなりました。(2022年9月)