はじめて利用したメルカリの出品者は親切な人でした。
「もしご自身が、この教科書を使っていたのであれば感想をお聞かせ願えないでしょうか」と、取引が始まる時にコメント欄に書きました。この教科書は印刷は昭和62年とありますので、高校2年生の17歳と考えると昭和45年頃にお生まれになった方でしょうか。現在52歳前後と思います。
コメント欄に返信がありました。
「この度はご購入ありがとうございました。高校時代の教科書となりますが、教科書を使用した形式の授業ではなく実技を中心とした授業でしたので、授業中に使用することはほぼありませんでしたが、美術が好きだったので長期保管しておりました。今改めて読むと、とても親切で愛情を感じる内容だと思います。また、他の教科書との比較は出来ませんが文章も多いように感じます。かなり前の事ですので回答が求めてる内容と違うかもしれませんが、資料として役立つことがあればうれしく思います。」(原文ママ)
このような声は、この教科書を作った太田弘さんに届いていたのでしょうか。
現在ぼくは、ある高校のグラフィックアーツの教育を考える会に参加しています。その集まりの中でも、高校の先生から同じようなことをお聞きしました。美術の授業時間には限りがあるため、どうしても創作に比重を置きがちになってしまうようです。しかし、太田さんは〝見る〟〝感じること〟を大切に、鑑賞に力を入れた教科書を目指していました。現役の高校生活の中では、その想いになかなか届かないのが実情かもしれません。しかし、このメルカリの出品者の方が書いているように、持ち続けいつか目を通した際、愛情は伝わるのだと思いました。「いつまでも手元に置いておきたい教科書」、それが現代美術社の教科書だと思いました。(2022年8月)