人は、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚(臭覚)の五感を使って捉える身の回りのことの80%以上を、目から入る情報に頼っています。
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視覚に障害を持った子どもたちが点字で綴った詩を載せている児童書『雨のにおい 星の声』(文:赤座憲久 絵:鈴木義治/小峰書店 1987年刊)からいくつか引用いたします。
パウル・クレーが好きでカラーリストでもあった鈴木義治さんの絵も印象に残る本です。
『雨のにおい 星の声』 は、1988年の第34回青少年読書感想文コンクールの課題図書にも選ばれています。
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「 雨がふってきた
土くさい
土くさい
どしゃぶりだ 」
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「 まがりかどは
風のうごきが かわります
人通り車の音 人びとの話し声で
どのあたりか わかります 」
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「アスファルトの道
ジャリの道
でこでこと草のはえた道
足のうらからも
あたりの景色がひろがります」
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「星は キラキラ光っていると
みんながいう
ぼくは 星をしらない ※
でも なんだか
ネコの なき声みたいな 気がする」
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読んでいると、どれもそのような気がしてくるようで、身体がムズムズしてきます。
目を閉じると、今まで気づかなかった時計の音が聞こえてきたり、靴底の硬さを感じたりします。視覚情報がないと、他の感覚が研ぎ澄まされていきます。
指先の触覚が研ぎ澄まされ、点字もすらすら読めるようになっていくのでしょうか。
点字のことを考えていると、人の感覚は本当にすごい!と思うようになります。そして、自分の持っている五感を、あらためて大切にしていきたいという気持ちが湧いてきます。
NHKの福祉関係の番組で、視覚障がい者の人が「点字ができるようになると、暗闇でも本が読めるようになります」と、明るく話している場面を見ました。自分の境遇を受け容れている姿に接し、とても清々しい気持ちになりました。教わることの多い点字の世界です。(2023年4月)
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※「 ぼくは 星をしらない 」の一行を読んで、小野千世さんは、目の見えない子のことを想い〝泣けてしまいます〟とコメントして戻してくれました。(文章教室の添削にて)