左がPETALS、右が2004年の「ささやき」。線の再現が違います。PETALSの線は繊細で、「ささやき」は線が滲んでしまっています。これは元にした原稿の違いだと考えられます。PETALSはすずき大和さんのオリジナルの原画(おそらく線画と色は描き分けされていたものでしょう)。「ささやき」は印刷物を原稿にして作られたものではないでしょうか。原画から作りたいと考えても、原画自体が既にない場合もあり、あっても保存状態から使うのが難しい場合もあります。印刷物になるまでには、いろいろな道程があることを線がささやき教えてくれています。水彩などの淡彩を使った絵本の原画では、印刷された絵本の方が長く生き延びていくこともあると思います。絵本を見ていますと、このようなところに目が行ってしまいます。また、ディテールに目を向けるのは製版人の性(さが)なのかもしれません。(2021年12月)