この本に出会ったのは、横浜の蒔田中学校の図書館です。最初、表紙の風紋の写真に魅かれて手にしました。矢沢宰さんという新潟の見附に生きた詩人です。

 最初に製版の仕事に就いた会社では、「詩とメルヘン」(サンリオ)という月刊誌の製版をしていました。そして、この月刊誌で矢沢宰さんの特集があったことを知り、懐かしさから『光る砂漠』(1969年・童心社)をあらためて読み返しました。薗部澄さんの写真を見た瞬間、頭の中を中学時代の図書館の映像が蘇りました。

 後日、薗部さんが多川精一さんの親友であることを知り、不思議な縁を感じることになりました。

 そして、サンリオから出版された矢沢宰さんの詩集『少年』の挿し絵を描いていたのが小野千世さんであり、より絡み合う不思議な縁を感じました。後日、小野千世さんに『少年』の話をお聞きしたところ、『光る砂漠』がたいへん美しい装丁であることを知り、画家として『少年』に絵を描くのはとても苦しかったとの話をお聞きしました。


 童心社から出版される1年前の1968年に、南北社から同名の『光る砂漠 ー第一に死がー 』が出版されています。こちらは詩と日記を併せた本になっていました。こちらの本にはリーフレットが付いており、そこには「宰よ」と呼びかける、矢沢宰さんのお母様レウさんの文章も載っています。

 童心社からも1970年に日記編として『足跡』が、そして児童文学作家の鶴見正夫さんが矢沢宰さんの生涯を書いた『若いいのちの旅』(こちらも童心社)が1986年に出版されています。どちらの本にも、薗部澄さんの郷愁を感じる美しい写真が使われています。

 矢沢宰さんのふるさと見附のギャラリーで、この冬(2021年12月25日~2022年1月30日)展示会があります。(2021年12月)