『絵本ギャラリー』の一部を転用します。

表紙と扉

扉と巻頭の口絵は『雪わらしのうた』でした。赤坂三好さんにとっても 『雪わらしのうた』 は愛着のある絵だったのでしょうか。『雪わらしのうた』 の原画の製版カメラを担当できたことを、あらためてうれしく思いました。

日本の民話も西洋のお話も、自分の世界として描き出す画力

どれも、絵本や児童書の絵です。画集をめくっていると何か違和感があり、文字がすっと抜けてしまった印象を持ちます。それだけ、文字と一体感のある絵と思います。

最後に、この画集の楽しい奥付を紹介します。もっと見てもらいたい絵であり、画家と思います。

ユーモアのある楽しい奥付です

2020年に、ある人との出会いがありました。写真家・エッセイストのみやこうせいさんです。みやさんは、赤坂三好さんとお二人でルーマニアをめざす貧乏旅行をされ、『明日は貴族だ!』(文:みやこうせい 絵:赤坂三好 あすなろ社 1970年刊・絶版)という紀行文を本にされていた方です。この本は、2011年に未知谷から新装版が出されましたが、みやさんは最後に赤坂さんのことを書いています。長くなりますが引用します。

「ミヨシさんが旅のパートナーでなかったら決して成り立たなかった。天性の才能が溢れて、すぐれた感性の持ち主で、非常にシャープ、繊細きわまるセンス、江戸っ子と自称する、短気、物事に拘泥しない大らかさ、毒舌、さまざまな要素が一身に混在して、けがれを知らぬ子供のようなたくましさも息づいている人。そして、何とも涙もろく、人を包み込む。この人が数年前に、旅立ってしまった。一か月後に、ある編集者から聞いて、思わず、一瞬、叫びにならない声を上げて、泣いて、涙も出なかった。(中略)爾来、悲しみが心の中に沈殿して、もはやそれは、ぼくの核となったような気がする。毎日ミヨシさんを思い出す。ひときわ気性がいいので、会う人毎、特に芸術家たちに愛され、彼らと百年の知己になった。そのミヨシさんがいない。(以下略)」

こちらの書影は未知谷版

 後日、みやさんから「赤坂三好さんの母方は、日本画の狩野派の家系につながっている人です。」とお聞きし、溢れるエンターテイメント感、そして絵と文章の融合は浮世絵からの血を受け継いでいるのだと、ひとり合点していました。ぼくから、絵本『雪わらしのうた』をみやさんにお渡ししました。(2022年2月)