『水の宮殿、鳥の歌』は美しい装丁の本になりました。表紙にはみやこうせいさんの写真集『ユーリー・ノルシュテイン』(未知谷刊)と同じ、美しいシルキー調の布が貼られています。出版社の未知谷の飯島徹さんの演出と思います。書店で、カバーをていねいに外してクロスの色と手触りをおたのしみください。

 みやさんの話の中に薗部澄(そのべきよし)さんの名前が出てきました。多川精一さんの親友の「そのちゃん」です。みやさんも薗部さんとご一緒に、『メルヘン紀行』(未知谷 2005年刊)という本を作られていたことを知りました。北海道から沖縄までの旅をした時の心象風景をまとめたものです。

左:『メルヘン紀行』表紙
右:扉の裏(左の木の下に佇む薗部さんと後姿のみやさん)

 「薗部さんには、お弟子さんがたくさんいました。ただ口数も少なく笑うことも少ない人でしたので、弟子さんたちは薗部さんを怖がっていました。ただ、心根は本当に優しい人で、その弟子たちをご自身の伝手(で仕事に就けるようにしていたのを、ぼくは知っています。」このように、みやさんは話していました。また『メルヘン紀行』のあとがき“風景の内と外”に「ソノベさんの作品を見て改めて写真は愛情であると痛感する。」と書いており、薗部さんを敬愛されていたことがわかりました。そして、矢沢宰詩集『光る砂漠』のこともご存知でした。

 ぼくの中で、ひとつの点(星)が線でつながりました。多川精一さん、薗部澄さん、みやこうせいさん、矢沢宰さん の星で作られた星座になりました。みやこうせいさんに感謝の気持ちを込めて、多川さんから頂いた薗部さんの笑顔の写真をお渡ししました(薗部さんは、僚友の多川さんたちにしか笑顔は見せなかったのかもしれません)。みやこうせいさん、ありがとうございました。(2022年2月)))