2020年の暮れに、みやさんから次の写真集の画像を見てもらいたいと話がありました。ぼくの方からは、色校正を作ること、そしてその色校正をしっかり見てもらうことをお願いしました。
画像に関しては、仕事ではなく友人としてレタッチしたいとお願いしました。2020年の年末から翌年の1月のプライベート時間の中、 PhotoShop を使いながら、ずっとモニターとにらめっこしていました。前回のⅠ‐ⅳで、色をモニターで判断することを薦めていなかったのになぜ?と思われるかもしれません。
今回使ったモニターは自宅のもので、モニターの「見え」の傾向や部屋の環境(照明)など慣れ親しんだものでした。そのモニターとPhotoShopでアミ点の割合(%)を見て、ぼくの頭の中にあるカラーチャートと比べながら、印刷された時の色を作っていきました。そしてなにより、色校正が次に控えていることで大胆な画像処理ができました。
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「頭の中のカラーチャート」は感覚的なものです。この仕事に就いた頃、職場の仲間と行った居酒屋では、「あの暖簾は、アミ点は何%ぐらいだ」とお互いに言い合う、それが肴になることもありました。また、東京プロセス工業協同組合の運動会が豊島園で行われていて、競技には走った先の籠から「C**%、M**%、Y**%」と書かれたメモを取り、次に走った先の籠からその%に合う色紙を選び出してゴールするものもありました。審判もメモと色紙ですぐさま判断、まさに頭の中のカラーチャートを競う競技でした。このような中で鍛えられて作ったカラーチャートです。コンピュータとは違う「勘(カン)ピュータ」ですが、今までの経験を柔軟に取り入れて作ってきた実戦向きのカラーチャートです。
下の写真は、左が入稿したままの画像、右上が切り抜いた画像、左下が背景の樹木を全面に置いた画像です。どれも子どもの写真は同じです。切り抜くと子どもの顔の印象は少し暗くなり、背景を置くと明るくなります。周囲を考えて明るさを調整するのも、先人レタッチマンのノウハウでした。この経験と五感を総動員して、モニターに向き合って作業を進めました。(2022年2月)