ドナウ・デルタの河口の写真を紹介します。

 みやさんからは、「波が高く、危険な中で撮りました。岩を隔てた手前がドナウ川、向こうが黒海。黒海は本当に黒い海でした。岩に留まっている鳥は、シルエットにしてください。」とありました。レタッチ作業としては、ドナウ川と黒海をマスクで切り分けて、それぞれ黒と青を強調しています。また鳥をシルエットにするのは、強い陽の光の印象であったのだと思い、輝く波の光もフィルタ(シャープさ)で強調しました。

 写真集のインデックスには「ドナウと黒海がせりあい 鳥はめまいする」と、みやさんは書き添えています。みやさんの〈思い〉を再現できているでしょうか。

左:入稿した画像 右:レタッチ後の画像

 最後は、冬の黒海の冬景色です。

 みやさんからは「冬の陽の光線をもっと強調してください。」とありました。レタッチ作業としては、海に影響しないよう水平線でマスクを切り、上部をアンダーにしてから、PhotoShopの「覆い焼きブラシツール」でわずかにある光の筋に沿って焼き込み、光線を強調しました。覆い焼き作業では、露光量をかなり控えめにして、繰り返しながら少しずつ光線を増幅させ作っていきました。

 中学時代に、写真部の暗室で行った手のひらでの覆い焼きを思い出しました。ぼくの絵心で起こした光は、みやこうせいさんの〈思い〉と重なることができたでしょうか。

 こういう場合こそ、モニターを利用し、作者とレタッチマンが一緒にモニターを見ながら作り込みをしていくとよいと思いました。(2022年2月)

左:入稿した画像 右:レタッチ後の画像

印刷立ち合い中の『水の宮殿、鳥の歌』
光線をこの段階でも確認していました