図書館で、『月蝕書簡』(寺山修司未発表歌集・岩波書店 2008年刊)を手に取りました。本を開くと、ノドの部分に目が引き寄せられました。

網点で作られる線がノドに向うほど密になるよう表現されています
右は天小口側から見た状態

 寺山修司の歌の余韻もあるからでしょうか、目がノドに吸い寄せられて巻き込まれていくような錯覚がありました。

 墨のインキはやや青墨でしょうか。わずかに墨の中に色を感じました。装丁は中島浩さん。

 もう一冊紹介。こちらの本も、本屋さんで手に取っていく内に、黒の世界に引き込まれた絵本です。

 『ほっきょくで うしをうつ』(作:角幡唯介 絵:阿部海太・岩崎書店 2022年刊)。谷川俊太郎さんが企画する〈死をめぐる絵本シリーズ・闇は光の母〉の一冊です。

 本屋さんでページをめくりながら、思わず〝すごい本〟と声を出してしまいました。

背景はミシン綴じ(*)の中(芯)ページ
糸には絵柄を分断しないよう白い糸ではなく、灰色の糸が使われています

*ミシン綴じとは:https://ehonpress.com/ehon.html(絵本プレスより)

背景は後見返し
黒紙に銀インキで印刷されています
左:本文 右:奧付け(文字は銀インキ)

 印刷の仕事に携わっていた時代、こだわっていたものに墨インキと銀インキがありました。シャープな文字には青墨、重厚な文字の印象には赤墨・・・、インキメーカーによっても墨インキに特徴がありました。同様に、銀インキもインキメーカーの特徴が出るインキでした。(2022年7月)