杉田豊さんは、至光社の『こどものせかい』に昭和30年代後半から挿絵を描かれていました。昭和40年になると、『こどものせかい』がまるまる一冊杉田さんの絵と文でできた絵本が生まれます。「どうぶつのおいのり」と「おはよう」です。
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今回は「おはよう」の一部(4見開き分の映像)を紹介します。
今見ても、美しい色の絵本です。このスライドは、以前ある大学の講座でも使わせてもらいました。花が咲いたように美しく感じましたので、〝至光社に咲いた絵本の花〟と題名を付け紹介しました。杉田豊さんの絵を絵本に開花させようと、武市八十雄さんや新日本セイハンの技術者が力を注いだことを話しました。
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〈追補・製版カメラ〉
製版カメラの全体像が写っている写真を見つけました。平野武利さんから頂いた、終戦後の 光村原色版印刷所 の工場の一部です。後列右から二人目が平野さんです。新しく導入された製版カメラを前にした記念撮影でしょうか。
皆さんの顔を見ていると、新しい製版カメラを得た喜びが伝わってきます。清々しい光が差してくる写真です。
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〈製版カメラ ~が無くなり、新しい技術の時代になっても〉
少し長くなりますが、平野さんが『印刷雑誌』に連載されていた「写真と印刷の源流をたずねて」(2007年11月号~2008年8月号まで10回にわたり掲載)の最後の章〝デジタル技術のみに頼らない〟を引用します(専門誌ですので、専門用語があります)。
「 やはり必要なものはいつもよい絵や写真に接することで、デジタルでシミュレーションされている画像をよく理解して、フィードバックできることだと思う。たとえば、原画からスキャナで直接分解する場合、線状光源の走査であるので、照明ムラはない代わりに質感が失われるので注意する。よい絵画複製は照明が重要である。また、デジタルカメラでの撮影でできる色空間も広がり、FMスクリーンと彩度を上げたインキの組み合わせにより、広い色域の印刷が最先端技術になってきたように思われる。しかし、これらの最新技術だけで品質が向上すると思うのは間違いであろう。今後も、それらが画質の一因であることを忘れてはならない。 」
平野さんが、この文章で〝フィードバックできること〟と書いているのは、自分の目で見て、自身の感性を磨いていくことを言っています。そして、〝 それらが画質の一因 〟とは、画質を見極める全ての中心は、ご自身であることを伝えたかったのだと思います。
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以前、ぼくが武市さんに送った手紙に、製版カメラのことを書いていたものがありました。製版カメラと人の大きさがよくわかります。(2022年5月)