糸の色を見てみると・・・
一般的に使われる白糸ではなく、絵の背景に近い色を使用することで絵柄を分断しない工夫がされています。
造本装丁コンクールの審査員も、この糸の色に対する配慮を高く評価したのではないでしょうか。
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この絵本の舞台となったアマミノクロウサギの生息する奄美大島と徳之島は、2021年7月に世界自然遺産に登録されました。それを表記した改訂版が今年の5月に出版されています。この解説文の改訂の他は、本文中の絵はそのままです。しかし、改訂版と旧版を並べてみると・・・
改訂版では、白糸になっていました。
また、印刷されている紙のエンボス加工の風合いも多少変わっていました。
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製本で使われる糸の見本帳です。一般に裁縫で使われているものと同じです。
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20年近く前に、糸綴じの作業現場を見学した際にいただきました。そこの職人でもあったご主人さんから伺った話では・・・
いろいろな色の糸を使うのは大きな手間ではないようですが、在庫(とその管理)が大変と話していました。製本の作業をしている最中に足りなくなることを避けるため、ある程度余裕をもって在庫していくようですが、中途半端な長さのままの糸ばかり増えていくのは困ると話していました。この話を聞いていると、印刷時に使われる特色インキと同じと思いました。特色インキの管理も大変でした。
おもしろかったのは、中ミシン綴じではなく糸かがり綴じの際、敢えて1本だけ糸の色を変えていた時代があったことでした。それは、白と見分けが付かないぐらいの色糸だったと話されていました。理由は、製本工程での事故が見つかった時、自分のところで製本した本か、他社のところのものかを見分けるためと言っていました。糸の色から「これはうちの製本ではない」と言えるための保険として使っていたようです。
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糸の色を使い分けている本がありましたので紹介します。ホームページで以前紹介した PETALS シリーズの一冊です。少し見づらいですが上の糸は美しい水色になっています。こちらは、花布と同じように〝本のおしゃれ〟と思いました。
しかし、別の刷り(2刷以降?)ではこの水色の糸は下の糸と同じ白になっていました。もしかすると、おしゃれではなく製本会社の別の意図があったのかもしれません。
糸に〝意図〟がある。おもしろいですね。
製本には、職人の知恵がまだまだたくさん隠されているように思います。(2022年11月)