徐 京植(ソ・キョンシク)さんが亡くなりました。

『子どもの涙』は好きな本の一冊でした。

 表紙のムリーリョの絵が好きでした。

 また、本文の「思春期の戸口にて『寺田寅彦集』」の「団栗」の挿絵、「子どもの涙(三)エーリッヒ・ケストナー『飛ぶ教室』の挿絵が、徐さんの文章とともに印象に残っています。ケストナーのことは、ぼくも「最初の絶望」というテーマでホームページに書いています。

『飛ぶ教室』の本文より

 

 徐 京植さんのことで思い出すのは、2016年のNHK日曜美術館で放映された画家 李仲燮イ・ジュンソプ・1916~1956さんのゲスト解説者での話でした。当時司会をされていた俳優の井浦新さんも、目に涙をためて聞いていたようでした。イ・ジュンソプさんをはじめ早世の画家の話を交え、淡々と韓民族の悲劇を話していたのを覚えています。

 2016年はイ・ジュンソプさんの生誕百年

 イ・ジュンソプさんは、東京の文化学院に学び、そこで知り合った日本人の山本方子(まさこ)さんと結婚、その後朝鮮戦争に翻弄され、国交のない韓国と日本に引き裂かれながらも、愛情の絆を紡ぎ続けた夫婦でした。

 画材が欠乏し、煙草の銀紙に釘で描いた絵は有名です。2016年にはこの絵を題材とした記念切手が韓国で発売され、ぼくもシートで購入しました。

 徐 さんの思い出としても、この切手を大切にしていきたいと思っています。(2023年12月)