印刷を介して表現される視覚芸術(ビジュアルアート)の総称です。現在ではペーパーメディア(紙媒体)に留まらず、より広いメディアも含んで使われることがあります。

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 江戸時代後期の戯作者 柳亭種彦の『偐紫田舎源氏)』(にせむらさきいなかげんじ)の四編上の一枚です。さし絵は歌川国貞。文政12年(1829年)より14年に渡って執筆され種彦の代表作です。どのように読んでいくのか戸惑うかもしれませんが、そこは当時の読者にも配慮した工夫がなされています。

 そして、女性の情念がめらめらと湧いてくる様が文字で表され、文字がさし絵を引き立てています。グラフィックアーツの原点ではないでしょうか。

 左下が汚れているのは、当時の人がめくる際に指に付けた唾の跡です。きっと何人もの人が代わる代わる回し読みをしたのでしょう。江戸時代の人が行燈の下で本を読んでいる姿を想像すると楽しくなってきます。

文字は多川精一さん