絵は自分の感性で見るものですが、いろいろな人の感じ方を知ることも楽しいものです。
ネット古書店海月書林海月書林の市川慎子さんが、2007年に作られた『いろは』5号には、「童画家 鈴木義治と、その仕事」の特集があります。実際に杉田の家に訪問した時の記事もあり、義治さんの娘さん卯位子さんの貴重な話も載っています。戦後、雑誌に絵を描いた時のペンネームには栄吉、光などの名前を使っていたことが。また画集の部屋があり、そこには小村雪岱もあったことが書かれています。※現在は手芸などの生活品も紹介する別名前のサイトに変わっています。
「絵を描くのが好きで好きでしょうがない。横浜の片隅にそんな画家がいました。厳しい姿勢に裏打ちされた やわらかで優しい作品群。画家・鈴木義治さんの生涯と仕事を追ってみました。」と、特集の冒頭の言葉です。 『いろは』5号 から4ページ紹介させていただきます。大変美しいA5判の冊子です。
文中の「おすすめの絵本からみる絵の話」で、市川さんは『はなおばあさんのおきゃくさま』(文:あまんきみこ 絵:鈴木義治・旺文社 1978年刊)をたくさんの図版とともに紹介しています。現在絶版になっていますが、図書館(の閉架)にはきちんと保存されていることが多いと思います。ぜひご覧ください。
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続いては、西荻窪で絵本専門の古本屋トムズボックスを営む傍ら、フリーの絵本編集者としての活躍される土井章史さんです。『Pooka(プーカ)』14号(2006年刊)の「絵本の礎」に載っています。冒頭は「タブローの緊張感をそのままに」で始まります。そして「タブローという言葉を僕はどう理解しているのか、純粋芸術論と言うべきか。鈴木義治の絵には、そういう匂いがするのだ」と続きます。
『鈴木義治画集 山びこのメルヘン』(岩崎書店 1977年刊)のあとがきに書かれていた、義治さんの「この十年は、だるまみたいに手足を引っ込めて家に閉じこもったままでした。たずねてくる人もまたこちらからうかがう人もほとんどなく・・・」から、画家としての静かな生活を想像していました。現代は「ひきこもり」という言葉がよく使われますが、画家にとって孤独でいる時間は大切なことを書いているように思いました。
鈴木義治さんの『まちのせんたく』(ひかりのくに 1968年8月号 文は中村美佐子/第18回小学館絵画賞 対象作品)を、パウル・クレーの色面と重ね、全ページを図版で紹介し、「こういう絵本を見ても、ぼくは絵描きとしての鈴木義治を期待してしまうのだ」と書いています。(2022年4月)